職人の知恵
先週の現場での出来事。
現場ではいよいよ床材が貼り始められていた。
今回は厚さ30mmの松材を使う。
一般的なフローリングは12mm~15mmだからかなり厚い。
そして、材木には節による等級があり、上から無節、上小節、小節、特一等、一等、二等となる。
無節は和室の造作材によく使われ、文字通り節が無い、故に値段も高い。
建売等の和室に使われる造作材は、
集成材の芯材に突板と呼ばれる0.5mm程度の無節の薄い板を貼ったものが多く、安価。
無垢材を使用する事は稀である。
この家の床材は特一等を使用しているがこれで十分だし、
私はむしろ節のある表情が好きなので、あえて無節を使わない事が多い。
節の表情が好きといっても材料毎にばらつきは多い、それが無垢の特徴であり”味”なのだが、
ついつい、「綺麗な面を仕上げに使ってください。」と大工さんに伝えてしまう。
すると、「え~?」と軽く軽蔑したような返答が返ってくる。
そうだった!! いや~うっかりしていた。
無垢の床材にはすでに表と裏があるのを忘れていた。
綺麗な面を選定する余地はないのである。
木の断面を見たときに樹皮側を木表、樹芯側を木裏という。
通常床材は木表を仕上げに使うのである。
なぜか?
1.板は乾燥すると木裏側に凸に反る、したがって木裏を仕上げに使った場合、
山形に反り、板の中央は釘が打てないため暴れやすい。
2.木裏は逆目(さかめ)といって毛羽立ちが多いため手触りが悪い。
等々、ちゃんと理由がある。
作為的に材料を選定せず、自然に委ねると言うことだろうか。
職方の知恵と伝統を垣間見れる木造はやっぱり奥が深い。